乾徳山は山梨県にあり日本二百名山、山梨百名山にも選ばれている標高2,031メートルの山です。乾徳山は武田信玄ゆかりの恵林寺の山号にもなっています。
名前の由来は恵林寺から見て乾(戌亥)の方向に位置するのと、所在地の徳和集落の徳から乾徳山と名付けられたそうです。
乾徳山は頂上に近づくにつれちょっとした岩登りが楽しめます。岩登りといってもクライミングの経験が無くても三点確保ができれば十分に登ることが可能です。難易度としては山梨県の定めたグレーディングで体力度3(1~10)技術度C(A~E)となっています。
登山口へはバスでもアプローチ可能な公共交通機関利用者にとってありがたい山です。日帰りで行けて標高もそこそこあり、富士山が眺められ、岩場もありとなかなか魅力に富んでいます。
乾徳山へのアクセス
公共交通機関の場合、塩山駅から西沢渓谷入口行きが山梨交通バスが8:30に出ており約30分ほどで乾徳山登山口に到着します。
また塩山駅からふた駅甲府方面の山梨市駅からも西沢渓谷行きの山梨市民バスが出ており途中で乾徳山登山口にアクセスが可能です。但し山梨駅を9:12に出発して到着が9:44となっており、スタート時間が40分ほど遅れることになります。
東京方面から来る場合、あまり山梨駅からバスに乗るメリットはありません。ですが帰りのバスの時刻表を確認すると塩山駅行きの最終バスは16:08なのに対し、山梨駅行きのバスは16:51分となっています。※2024年現在
乾徳山登山口からスタートするとルートにより差が出ますが標準コースタイムは概ね6時間半~7時間ほどなので9時にスタートすると16:08は余裕があるとは言えません。体力に自信がない人はもちろんですが、ペース配分を間違えて途中でバテてしまったりするととたんに時間に追われるハメになります。
そのことを考慮すると山梨駅行きの16:51はとてもありがたい存在です。本当は最終が18時くらいであればほとんどの人がバスに遅れる心配をしなくて済むと思いますが。
マイカーの場合乾徳山登山口の他、大平高原にも駐車場がありこちらの方が乾徳山により近い位置にあります。大平高原駐車場の利用者は乾徳山の奥の黒金山まで足を伸ばすケースが多いようです。
更に乾徳山登山口まで車で来てそこから西沢渓谷までバスで行き黒金山を経由して乾徳山へ縦走したり、乾徳山登山口を早朝に出発して西沢渓谷からバスで車のある乾徳山登山口まで戻って来るパターンもあります。
買えなかった昼食
乾徳山の登山コース上には食べ物を購入できる山小屋はありません。また乾徳山登山口でも同様です。なので昼食は最低でも塩山駅に到着するまでに用意しなければいけません。
昼食は塩山駅の売店で購入すればいいかと思っていたのが大失敗。改札横のキオスクは午後のみの営業でした。しかも帰りに寄ったら売っているのは飲み物とおつまみ類に菓子パン数種類にお土産くらいなので通常の売店と比べて圧倒的に少ない品揃えです。
塩山駅周辺には徒歩圏内で行けるコンビニはなく、事前に用意していた行動食のみで挑むことに。グミ2袋、ゼリー飲料1つ、栄養バー1つと心もとなかったのですが、どうしようもないので取り敢えずスタートしました。
途中で空腹を感じたら潔く撤退も選択肢に入れていましたが、結果的に朝食を多めに摂っていたので行動食のみで間に合いました。せめて新宿駅で購入しておけばよかったと反省。
乾徳山登山口からオソバ沢ルートで国師ヶ原十字路経由で乾徳山へ
紅葉の時期は平日でも登山者でバスが混んでいるという情報があったのですが、この日は11月12日でもうシーズンも終わっており乗客はまばらでした。バス停の近くにトイレがあります。
乾徳山登山口バス停を降りて橋を渡るとすぐにオソバ沢ルートと道満尾根ルートを示す看板があります。オソバ沢ルートはしばらく徳和川に沿って集落の中を進みます。
写真は鳥居が影と陰と木の枝で隠れていてわかりにくですが、乾徳神社を過ぎると民家がなくなり林道へ。スタートはミレーのアミアミにベースレイヤー、ソフトシェルを着ていましたが体が火照ってきたので早々とソフトシェルは脱ぎました。ここで面倒くさがると必要以上に汗を掻いてしまいます。
しばらく歩くと見逃しようのない登山口の看板が表れます。なぜピンクテープがこんなにつけられているのかは意味不明。
熊出没地帯だそうですが、最近はどこに出ても熊はいるもんだと思っておいた方が良いのでしょう。
ルート上に設置されている看板は何故か青く塗られているものが多かった。はじめの方はひたすら登りです。
途中で広い林道に出ますが横断します。
しばらくは標高を稼ぎながら樹林帯を進みます。登山道はきちんと整備されており危険個所はありません。
駒止という少し広いスペースに出ました。
錦晶水という水場。初めは湧き水だと思い何口が飲んだ後、視線を少し上に移すと沢水でした。飲んでいいんだよなここの水?
登山口に近い標高の低いところではまだ樹々に葉がついていましたが、このあたりまで来るとほとんど落葉状態でした。
乾徳山が見えてきました。実際のピークはもう少し奥にあります。
国師ヶ原十字路という分岐点には高原ヒュッテという避難小屋があります。立ち寄りませんでしたが、トイレもあるそうです。国師とは恵林寺を開いた夢窓疎石という鎌倉時代の禅僧のことらしいです。枯山水を作り出した作庭家としても名高いのだとか。
国師ヶ原を抜けると視界が開け扇平に到着です。樹林帯を抜けるといつも思わず空を見上げてしまいます。あたり一帯すすき野になり雰囲気がガラッと変わります。気持ちの良い草原地帯ですね。
分岐に突き当たると草原の中に鎮座している月見岩が目に入ります。すすきが生い茂った中で夜空に浮かんだ月を眺めているような姿を想像するとまさに相応しいネーミングです。
この扇平では振り返ると甲府盆地の向こうに富士山が見えます。この日は雲で山頂の部分しか見えませんでした。ここで貴重なゼリー飲料で燃料補給。
すすき野が終わると再び樹林帯になり岩がボチボチ出てきます。岩場が出てくるとテンションが上がります。初めの方の岩場は別にクサリはなくても大丈夫な感じでした。
見事に割れた髭剃岩という奇岩。名前の由来はわかりませんが、きっと少なくない人が石川五右衛門が斬鉄剣で真っ二つにしたと想像したことでしょう。
カミナリ岩というクサリ場です。さすがにここはクサリの存在がありがたいです。登りよりも下りの方が難しく感じました。雨で濡れていたら結構恐いかもしれませんね。
大きな岩の窪みの胎内。
乾徳山山頂への最後の関門は鳳岩です。乾徳山といえばこの岩場の写真をよく見かけます。裂け目を上手に利用すれば特にテクニックは必要なく登れてしまいますが一応迂回路もあります。垂直に近い角度に見えるかもしれませんが、実際に見るとそこまで急ではありませんでした。
乾徳山の山頂はさほど広いとはいえません。この日は自分を含めて登山者が5人しかいなかったので窮屈さは感じませんでした。登山者が多いとゆっくりとはできなさそうです。頂上からは富士山をはじめ南アルプスや奥秩父の山々が見渡せるのですが、残念ながら雲で隠れていました。下の写真はどちらも奥秩父方面。
帰りのバスの時間までに余裕がない訳ではなかったのですが、雲は取れなさそうだし念のため少しの滞在で下山開始。もちろんこの先の笠盛山や更に先の黒金山へ行く時間はありません。
下りは道満尾根を通り乾徳山登山口バス停へ
下りのコースは国師ヶ原に出る迂回下山道もありますが、扇平までピストンし道満尾根で下るコースを歩きました。
扇平のすすき野まで戻ったところで栄養バーを摂取。残りはグミしかありませんが空腹はあまり感じませんでした。月見岩の分岐で国師ヶ原へ下りるのではなく直進して道満山方面へ。
しばらくはほぼフラットでとても歩きやすい道が続きます。ですがこんな穏やかな道はすぐに終わり、意外と思えるほど長い急坂が続きます。ですがキケンな箇所は特にありません。ルートは違えどもこんなに標高差があったかなと思いながら下り続けました。バスの時間には間に合いそうだったので、少々ペースを落として膝を労わりました。
下っている途中に紅葉が部分的に残っていました。
樹林帯の中の道満山の頂上を通過して道満尾根の登山口に到着。道満山以外ではほとんど登り返しはないので、精神的にはあまりキツくはありません。その道満山の登りもあっけないのでひたすら下っている感じでした。
集落へ動物の侵入を防ぐためのゲートがありました。
乾徳山登山口バス停には15時半過ぎに到着したので16:08発の塩山行きのバスには余裕を持ってゴールできました。
乾徳山は樹林帯、草原、岩場とバリエーションに富んだルートを日帰りで楽しめます。最後の鳳岩のクサリ場は思ったほど怖くはありませんでしたが、無理だと思ったら迂回路もあります。所々にマークされたペンキは経年により薄くなっていましたが、道に迷うようなわかりにくいところもありません。
今回は雲が多かったのですが頂上からは絶景を360度見渡せるのも魅力のひとつです。
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