雷鳥

白馬岳 栂池から小蓮華山を経由し猿倉へ

白馬岳は北アルプスの後立山連峰に位置し標高は2932メートルです。白馬岳への登頂は今回3回目で、以前は2回とも白馬岳頂上宿舎でのテント泊でした。白馬岳へのルートはいくつもありますが、今回選んだのは栂池から小蓮華山経由で白馬岳山荘へ宿泊し、大雪渓を通って猿倉へ下る代表的なコースです。

今回宿泊した白馬岳山荘は明治38年開業の歴史ある山小屋であり、収容人数は800人と規模も日本最大級です。大きなガラス越しに絶景を眺められるレストラン、スカイプラザ白馬はこの山小屋のウリでもあります。7月の下旬に栂池高原に前泊をして白馬岳山荘に宿泊してきました。

シロウマかハクバか

白馬岳はシロウマダケと登山者の間では呼ばれています。名前の由来は春になると雪解けで露出した岩肌が代掻き馬(シロカキウマ)の形に見えるからというのもよく知られた話です。そのシロカキウマがシロウマへ変化したと言われています。また明治時代の日本陸軍陸地測量部が一等三角点を設置する際にシロウマダケとしたという文献もあるそうです。

ところで白馬をシロウマと読むのは白馬岳のみで白馬村、白馬駅、白馬大雪渓、白馬山荘をはじめとする山小屋などもハクバと読みます。なぜか山だけがシロウマなんですが、上記のような由来を考えるとハクバという読み方は誤用ではないかと思ってしまいます。スキー観光客にアピールするため発音しやすいハクバの呼び名を広めたという逸話もありますね。

ですが根強い代掻き馬説も確実というわけではないようで、1880年に編纂された『信濃国地誌略』には白馬の文字にハクバとルビが振られており、その時代にはハクバの読み方が存在したことを示しています。更に地元の人々は昔からハクバダケと呼んでいるそうです。

実はシロウマダケと読む定着する元となった「代掻き馬」説には確証となる文献や資料はないとも言われています。

前日は栂池高原に前泊

公共交通機関で東京から白馬駅に行くには実は福岡へいくより時間が掛かるという恐ろしい事実があります。車ならば早朝に登山を開始できるようスケジュールすることもできますが、電車利用だと前泊するという選択肢がでてきます。その際、なるべく早く登山を開始したいなら栂池山荘や栂池ヒュッテ、猿倉荘に泊まるのが一般的です。ですが自分の場合仕事の関係で最も早い特急あずさに乗れないので、栂池高原の民宿に宿泊しました。

松本駅から大糸線に乗り換えるのに30分ほどありチケットも松本までだったので一旦改札を出ました。ここでちょっとした失敗。大糸線ではICカードが使えないのをすっかり忘れておりPASMOで入場してしまいました。

JR大糸線ではICカードが使えません!

JR大糸線の白馬駅に着いた時点で空には雲が立ち込めていました。天気は予報どおりあまり期待できなさそうです。

白馬駅前

 

白馬駅からバスで栂池高原で下車。今回お世話になったのはやまきゅう荘さん。スキー場に隣接するこのあたりは宿泊施設が多数あり、真夏ということもありまったく混んでいませんでした。料金は2食付きで平日だと8,800円、週末や祝前日でも9,350円です。この日の宿泊者は自分ひとりのみ。

やまきゅう荘

 

今回やまきゅう荘さんを選んだ理由は一人宿泊客も受け入れてくれることでした。一人だと宿泊プランがない宿は結構あるのでありがたいですね。宿の方々の対応も親切で食事もおいしく満足でした。

夕食夕食
朝食朝食

1日目 栂池から白馬大池、小蓮華山を経由して白馬岳へ

やまきゅう荘から歩いて数分でゴンドラ乗り場へ、途中でロープウェイに乗り換え栂池平の登山口へ。料金は片道2,000円。麓のゴンドラ駅では青空が見えます。

ゴンドラ乗り場

 

ロープウェイ駅を出ると湿気のもなく涼しい空気に包まれます。すでにガスっています。すぐに栂池山荘と栂池ヒュッテに見えてきました。

山小屋

 

二軒の山小屋に並んで建っている栂池ビジターセンターの脇に登山道入り口があります。

ビジターセンター
登山道入り口

始めは樹林帯はなのですが、すぐに左右の樹々の背が低くなっていきます。見通しの効かない樹林帯を長く歩くのは嫌いという人にはうれしいコースです。初めは樹林帯の中を進みますが、木道や石が現れ、やがて雪渓を渡るポイントに到着。せいぜい20~30メートルの長さで傾斜も緩やかということで雪渓では軽アイゼンやチェーンスパイクは必要ありませんでしたが、他の登山者の中には使っている人もいました。

 

雪渓を渡ると完全に森林限界の景色になります。青い空が見たい。

森林限界

 

乗鞍岳のケルン。そこそこ大きい。こちらは乗鞍高原の乗鞍岳と区別するため白馬乗鞍岳と言われています。

ケルン

 

ケルンを過ぎると白馬大池が見えてきます。雪渓を渡ってからここまで30分ほど。山と高原地図のコースタイムより結構早く白馬大池に到着しました。決して急いではいないし、健脚でもないのでコースタイムが甘いと思います。

白馬大池

 

赤い外観が特長的な白馬大池山荘。ここで菓子パンを買って小休止。このときは軽食メニューにチャーハンがありました。あまり軽食メニューに力を入れていない印象です。夕食のカツカレーは有名ですね。

白馬大池山荘

 

白馬大池から小蓮華山方面へ向けて出発です。振り返るとあっという間に山荘が小さくなっていました。ガスってなければと何度も思ました。

白馬大池と山荘

 

小蓮華山周辺の稜線は北アルプスの中でも素晴らしい羨望を誇るルートなのですがそれも天気次第です。

稜線
小蓮華山稜線

こちらは2013年のときの写真。ガラケーで撮影したので画質がイマイチ。

小蓮華山

 

登山道のすぐそばに雷鳥がいました。一旦遠ざかりかけましたが、またすぐに近くまで寄ってきました。

雷鳥
雷鳥
 
小蓮華山に到着しました。鉄剣だか鉾だかが刺さっています。
小蓮華山山頂
鉄剣
 
相変わらずガスで視界が開けません。一瞬でも晴れ間が出ないかと期待していましたが、結局その願いはかなわず。
稜線
 
長野、新潟、富山の県境が接している三国境。
三国境
三国境
 
三国境を過ぎると約40分ほどで白馬岳に到着。くどいようですがやはり空は真っ白。
白馬岳
 
頂上の崖は横から見るとけっこうエグイ感じ。もちろん崖の淵際は立ち入り禁止。
崖
 
この日の天気予報は曇りのち雨でした。なんとか雨が降る前に白馬山荘にたどり着けたと思ったのですが、この後もしばらく雨は降りませんでした。
白馬山荘
 
ビールを飲みたい一心で受付けを素早く済ませます。部屋は二号館の1階でした。
受付け棟
白馬山荘
 
館内には昔の資料や登山道具が展示されています。
登山道具
 
混雑時には食事は4回転するようですが、当日は1回転でした。
食事時間
 
受付けのスペースにはスマホの充電スペースもあります。1回100円でフロント業務が終了する20時までの利用となっているようです。
充電スペース
 
部屋に荷物を置き、乾燥室にタオルや手拭い、Tシャツを干したらようやくスカイプラザへ。なぜか写真が斜めになってしまいました。
スカイプラザ白馬
 
やっと念願の生ビールにありつけました。枝豆の量が想像以上に多かった。生ビールは1,100円、缶ビール500mlは1,000円、350mlは800円、缶ハイボール800円、缶チューハイ700円と高めの値段。まあしょうがないですね。
ビールと枝豆
 
スカイプラザはレストランだけではなく売店コーナーもありTシャツやカップなどを販売しています。
Tシャツ
タンブラーやカップ
 
夕食は17時からでした。ハンバーグはなかなかのお味。夕食後はまたスカイプラザに戻って日本酒やウイスキーを飲んでいましたが、営業時間終了後は談話室で缶チューハイをチビチビ。
夕食

2日目 白馬大雪渓を下り猿倉へ

朝食の時間は5時からでおかずは鮭、卵焼き、ウインナー、きんぴらなどオーソドックス。

朝食

 

この日の天気予報は雨。朝食時に降っていた雨が6時を過ぎた頃に上がったのですかさず出発。いつ雨がまた降り出していいように一応レインパンツは履いてスタート。ジャケットはすぐに羽織れますが、パンツは時間のロスがもったいない。

小屋前

 

白馬山荘を出てすぐに白馬岳頂上宿舎が見えてきます。ここの脇を通り白馬大雪渓経由で猿倉へ下りていきます。当初は白馬鑓温泉経由で猿倉へ行くルートも考えましたが、こちらは大雪渓コースより5時間ほど余計にコースタイムが掛かります。天気が良ければ少々帰りが遅くなろうが鑓温泉経由で行くつもりでしたが、いつ雨が降り出すかわからない状況では8時間超の鑓温泉のコースより3時間半の大雪渓コースを選びました。尚、あらかじめ天気予報では雨の確率が高かったので登山届けは大雪渓ルートで提出していました。

道標
白馬岳頂上宿舎

 

この時点でなんとなくガスが晴れてきた気がしたので、天気予報は大ハズレなのではと思い始めました。

雲

 

大雪渓の手前にある避難小屋。

避難小屋

 

雪渓下りの前に一度トラバースする箇所が出てきます。渡り切ったところでまた雪が途切れるのですが、面倒くさがらずにチェーンスパイクをつけます。

雪渓を横断

 

再び雲が沸くように立ち込めてきました。

ガス

 

チェーンスパイクを再度装着して大雪渓下りスタート。白馬大雪渓は針ノ木雪渓と剱沢雪渓と並んで日本三大雪渓の一つに数えられています。手前にルートの目印となるベンガラがうっすらと見えます。この目印に沿って下っていきます。時折振り返ると自分のいる位置から直線上に落石が鎮座していたりして、あまり気分の良いものではありません。できれば前爪のあるアイゼンとヘルメットの用意が望ましいです。

雪渓

 

雪渓上の空気は雪で冷やされ下に下りていきます。すると上方の暖かい空気が周りから入り込み雪渓上で冷却されますが、湿気を含んでいるので霧が発生しやすくなります。なので雪渓では視界が悪いことが多く落石に気付きにくいのです。このような状況で落石が起きたらと思うとゾッとします。ここの雪渓を通るたびに小さな石が転がる音は毎度聞きます。ですが勢いがついた大きな落石は接近した時に「ブンッ」と聞こえるだけで雪の上ではほとんど音がしないそうです。見えない、聞こえないでは防ぎようがないですね。

雪渓

 

やっと大雪渓がおわりました。

雪渓終点

 

雪渓が終わり登山道をしばらく進むと車両が通行できる林道に変わります。この時点で雨が降り出してきました。

林道

 

猿倉に到着。バスで白馬駅手前の白馬八方バスターミナルで下車し温泉に入りました。このあたりは入浴施設がいくつかあります。

猿倉

 

雷鳥
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