安達太良山は磐梯山とともに福島県を代表する山として親しまれています。今回その中腹に位置するくろがね小屋に2021年10月に宿泊してきました。
アルプスや八ヶ岳と比べ東北地方での有人小屋は数が少なく貴重な存在です。しかもくろがね小屋は通年営業で温泉もあり、こちらで提供される夕食のカレーは名物となっています。
一度は泊りに行かなくてはと思っていたところ、建物の老朽化から建替え工事が計画されているとのこと。今のところ2023年3月いっぱいまでの営業予定だそうです。その時にまだ宿泊人数を制限しているかわかりませんが、期限が迫ると混雑すると思われるので泊まってみたいと思っている人は行ける時に行っておくことをおすすめします。
安達太良山への主なルート
直接くろがね小屋を目指すなら奥岳登山口か塩沢登山口となります。共に路線バスが運行しています。ただし塩沢登山口からのルートは沢沿いで滑落の危険のある個所もあり、初心者向けといった感じではありません。
最も人気があるのが奥岳登山口からのルートです。無料で1500台ほど止められる駐車場があります。公共交通機関の場合は二本松駅からの路線バスも運行していますが本数が少ないので事前チェックを確実にしましょう。臨時バスが出るときもありますが、途中の岳温泉までは本数があるのでバスで行きそこからタクシーという手もあります。
奥岳登山口から安達太良山を目指す
二本松駅に8時過ぎに到着。8時15分発の季節限定の臨時バスに乗り、9時5分に奥岳登山口に到着しました。レストハウスはまだ営業時間前でした。ここで飲料を購入しますが若干割高なので、少しでも節約したい人は事前に駅や街中のお店で定価で購入しておきましょう。
ロープウェイを左に見ながら登山開始です。
歩き始めてすぐのところに奥岳の湯があります。休憩スペースはないんですね。レストハウスのほうに行けということでしょうか。
最初は林道を行きます。
すぐに分岐が現れます。どちらでも安達太良山へ伸びている道ですが、今回は薬師岳経由のルートを選択。
リフトの下をくぐりゲレンデの端を登っていきます。
やっと登山道っぽくなってきました。そしてこの辺から地面がぬかるんだ状態に。
途中で視界が開けて山の様子が見られる場所がいくつもあります。パッとしない空で、もどかしい。明日は雨の予報なのでこれ以上良くはならないと諦めました。
振り返ると紅葉の景色が。鮮やかというより渋めな彩りでした。
五葉松平に到着。安達太良山までのおよそ中間点。
安達太良山が見えました。中央は鉄山ですかね。
薬師岳に到着しましたが、あんまり山頂という感じではありませんでした。なのでこの写真だけ撮ってさっさと先に進みました。
高村光太郎の智恵子抄にある「ほんとの空」の記念碑。写真に入りきっていなかった。
薬師岳には見晴台があり、このあたりまでロープウェイで登れるので観光客の姿が。登山の場合このルートは初心者向けで危険個所もないので、よほど時間に余裕がない限りロープウェイを使うメリットはあまり無いと思います。トイレと自販機があります。
ロープウェイ駅から1時間ちょっとで安達太良山に到着。山頂は風が強くそれまで上半身はドライレイヤーとベースレイヤーだけで登ってきましたが、さすがにシェルを着ました。山頂付近になると所々に雪がありましたが、持ってきたチェーンスパイクの出番はありませんでした。
乳首と呼ばれる山頂は一方通行で登りと下りのルートが違います。標高はすぐそばの鉄山の方が1709mと少し高め。
しばらくするとガスが晴れてきました。
安達太良山からすぐ北にある鉄山を目指します。30分も掛からないほどの距離です。
沼の平は有毒ガスのため立入禁止。過去には事故も起こったそうです。中央奥に見えるのは秋元湖。
鉄山避難小屋が見えます。
鉄山から引き返してくろがね小屋を目指します。真ん中に小さく小屋が見えますね。
くろがね小屋に下る途中なかなかのグラデーションが見られたのですが、写真が下手すぎて色がまったく伝わりません。
くろがね小屋に宿泊
くろがね小屋に14時過ぎに到着しました。チェックインは13時からです。くろがね小屋は老朽化のため建て替えが予定されており2023年3月いっぱいまでの営業だそうです。
小屋のすぐ脇は温泉源となっていますが、ガスのため立入禁止になっています。マスク越しにも匂いがしてきました。
小屋の入り口には鐘が。
安達太良山は登山道が粘土質なのでここまでゲイターを着用してきました。ぬかるんだ場所も多くトレッキングパンツの裾はどうしても泥が付きます。小屋に泊まる際のマナーとしてゲイターは必需品です。
県営だからなのか料金は山小屋のなかでもかなり安いです。料金は2021年10月現在。予約は宿泊の3日前までに小屋に直接電話。ネットでの予約は今のところ行っていないそうです。
1泊2食付 | 1泊夕食付 | 1泊朝食付 | 素泊まり | 冬期暖房料(宿泊) | 日帰り入浴料 | 冬期暖房料(日帰り) | |
大人 | 6,600円 | 5,700円 | 5,000円 | 4,100円 | 400円 | 500円 | 300円 |
子ども | 5,400円 | 4,500円 | 3,800円 | 2,900円 | 400円 | 300円 | 300円 |
コロナ対策からか布団や枕はなく、寝袋とマットを持参するよう予約の際に伝えられました。
通常の小屋泊と比べて寝袋とマットを持参する分、当然荷物が増えます。なるべく荷物を少なくしたい、軽くしたいという方にはマットはサーマレストのネオエアーウーバーライトがおすすめです。
ニーモのZOR20Mと比べるとそのサイズの違いは一目瞭然。写真のネオエアーウーバーライトのほうはショートサイズ(収納サイズ15×8cm)ですが、レギュラーサイズ(同15×9cm)でも、やはり圧倒的にコンパクトです。重さもレギュラーサイズで170グラムという軽さ。
スリーピングマットで評判の高いサーマレストですが、その中でもネオエアーウーバーライトシリーズはその軽さとコンパクト性では群を抜いています。いままで使用していたスリーピングマットに致命的なキズができてしまったのを機に、新たにネオウーバーラ[…]
1階の食堂には年季の入ったストーブがあります。
1階は食堂や風呂場トイレがあり、建物中央部部に階段があります。今回風呂には入らなかったので写真はありませんが、受付で入浴したい旨を伝えると札を渡され、それで人数調整をしているようでした。勿論石鹸やシャンプー、ドライヤーはありません。
受付を兼ねた売店ではビール、チューハイ、日本酒、ソフトドリンク、カップ麺などが売っていましたが、お菓子やツマミ類はないとのこと。Tシャツやマグカップなどもありました。
寝泊りの部屋は2階にあります。普通の大部屋と2段のカイコ棚になっている部屋があります。個室はありません。
靴は部屋の縁に収納スペースに入れます。
小屋の入り口の脇に充電用のコンセントがあります。料金はかからないようです。モバイルバッテリーを忘れた場合などは特にありがたいですね。アダプターは各自必要ですが。ところでくろがね小屋は電波はほとんど入りません。たまに3Gになったり、アンテナが1本立つこともありますがすぐに圏外になってしまいました。
くろがね小屋の食事内容は夕食朝食共にいつも同じです。夕食は17時半からで朝食は6時からでした。因みに自炊の場合、予約すればコンロと鍋を1000円でレンタルできます。
夕食は秘伝のレシピといわれているカレーでお替り自由です。確かに美味しい。ラッキョウと福神漬けがついています。
2日目は雨だったので下山
朝食は温泉卵、牛スジの煮込み、海苔、たくあん、昆布、梅干し。
・温泉に入れる
・大部屋のみで個室はない
・夕食はカレー
・靴は部屋の収納スペースに入れる
・充電のためのコンセントがある
・携帯の電波はほぼ入らない
・酒のつまみやお菓子は売っていない
・コンロと鍋が1000円でレンタル可能(要予約)
・寝袋とマットは持参(コロナ対策?以前は寝具の貸出はありました)
夜半から雨が降り出し、弱まる気配がないまま夜が明けました。初日の曇りが恵まれていたと思えるほどの天候で、時間はたっぷりあるにもかかわらず選択肢は下山一択。
くろがね小屋から奥岳登山口へ降るルートは1時間半ほどの距離なのでバスの出発時間までかなり間があるのですが、とりあえず登山口までさっさと歩くことにしました。
途中で九十九折りになった馬車道といわれる正規の登山道とショートカットしている旧道の分岐があります。馬車道に比べて幅が狭く抉られたようになっている旧道の方は雨が水流となった状態で通るにはコンディションが悪かったのですが、何を考えたのかそちらを選びました。
旧道は最初下の写真のようになだらから状況だったのですが、すぐに段差のあるステップがひたすら連続する道に変わりました。当然ショートカットしている分、山の斜面をほぼ直線に降りていくので傾斜が急になるのは当たり前なのに不注意でした。
スリップしないよう注意して進みながら、すぐにルートの選択に間違えたことに気付きましたが、途中で馬車道と合流するはずとそのまま進みました。リスクを最小限にとどめるという観点でいうと、気づいた時点で引き返すべきでしたので今回の反省点です。
馬車道は旧道と比べ歩きやすさの差は歴然としています。安達太良山は初心者向けの山として紹介されますが、それは奥岳登山口からのルートの話しであり塩沢登山口のルートにはあてはまりません。以前沼尻登山口から塩沢へ歩いたことがあるのですが、くろがね小屋から塩沢登山口の間は沢沿いのルートで足場の不安定な箇所もあり決して初心者向けではありません。
奥岳登山口には8時半ごろに到着しました。バスの出発時間まで3時間以上あります。下山しながら考えていたのは岳温泉まで歩きそこからバスに乗ることでしたが、降り続く雨にげんなりし登山口でタクシーを手配しました。タクシーを待つ間に雨に濡れたレインウェアや汗を吸ったベースレイヤーを脱いで乾いた服に着替えました。
奥岳登山口から二本松駅まで5400円ほどでした。行きのバスで岳温泉と奥岳登山口の距離感はなんとなく把握していたのですが、歩くとなると結構時間がかかりそうです。ですが天気が良くて時間があれば奥岳登山口から奥岳温泉まで歩く選択肢はアリだと思います。