燕岳は標高2763メートルを誇り、北アルプスの女王とも呼ばれています。白い花崗岩からなる燕岳は周辺に点在するイルカ岩、めがね岩、ゴリラ岩をはじめとする奇岩が特徴的です。北アルプス入門編の山としても人気で多くの登山者に親しまれています。
また抜群のホスピタリティから、山小屋アンケートでいつも好感度上位のランクされる燕山荘の存在もこの山の人気に一役買っています。山小屋に宿泊するのに二の足を踏んでいる初心者の人へも、燕山荘なら安心して泊まれますとおすすめできるほど評判の良い小屋です。更には北アルプスでのテント泊デビューの山としてもおすすめです。
6月の下旬はまだ登山道には部分的に雪が残っていました。
燕岳へのルート
燕岳へのルートで一番メジャーなのが中房温泉登山口から合戦尾根を登るルートです。日帰りや1泊の日程に最適で多くの登山者がこのルートを選びます。但し雪の積もる季節は中房温泉までの山道は封鎖され、宮城ゲートから約13キロの道を歩かなければなりません。
次に大天井岳からの縦走路は表銀座コースとして人気です。このコースは槍ヶ岳方面と常念岳方面に分かれますが、どちらも最低2泊以上の日程となります。
更には餓鬼岳へ続く丸山新道があり、こちらは比較的に登山者が少なく静かなルートです。燕岳から餓鬼岳へ続くルートの途中にある東沢乗越から下山すれば、中房温泉を起点として合戦尾根からぐるっと周回コースにもなります。
今回は約3年ぶりのテント泊ということで合戦尾根のピストンを選びました。すっかり山小屋泊の荷物の重さに慣れてしまった身体には楽過ぎずツラすぎず丁度よいレベルのルートです。
北アルプス三大急登
とはいっても合戦尾根は烏帽子岳のブナ立尾根、剱岳の早月尾根と並ぶ北アルプス三大急登のひとつに数えられています。ただしこの3つの尾根のなかでは最も難易度が低いので、北アルプス三大急登の名前にためらう必要はありません。確かに急登ではありますが、ほかにもこのくらいのレベルの登山道はいくらでもありますし、特別注意を要する危険個所もありません。
・早月尾根(剱岳)
・合戦尾根(燕岳)
因みに日本三大急登となるとブナ立尾根、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根、谷川岳の西黒尾根となります。ブナ立尾根は日本三大と北アルプス三大の両方に選ばれています。
穂高駅からバスで中房温泉へ
公共交通機関で登山口まで行く場合、JR大糸線の穂高駅から中房温泉まで中房線乗合バスを利用します。通年で運行しているわけではなく、4月下旬から11月上旬までの期間限定で運行日によりバスの本数も異なるので必ず安曇観光タクシーのサイトで確認しましょう。少ない運行日だと1日1本しかありません。
中房温泉は毎日あるぺん号も利用できるので、夜行バスが苦手でなければ早朝スタートに便利です。
穂高駅周辺には自動販売機はありますがコンビニはありません。もし行動食を忘れたら登山口の中房温泉でお菓子を購入するくらいしかないので要注意です。
1日目 中房温泉から合戦尾根を登り燕山荘へ
バスは登山口の中房温泉のすぐ手前まで来ます。登山届けのポストもあるので出し忘れた方はここで提出しましょう。
なかなか立派なトイレもあります。道を挟んで反対側には水場があります。
中房温泉は標高1450メートル、ここから燕山荘の2712メートルまで登る、距離にして約5.5キロあります。登山道はこんな感じでいきなり急登が始まります。本当は身体を慣らすために最初は緩やかな登りがいいのですが、そんな都合の良いルートは滅多にありません。
今回自衛隊で使われているガッツマンという靴下を試してみました。登山ソックスは消耗が激しいのですが、ガッツマンは自衛隊の厳しい行軍や演習にも耐えられる優れた耐久性が特徴です。長く使える分コスパは抜群です。もちろん速乾、抗菌、防臭機能も備えています。
ガッツマンの下には5本指ソックスのインジンジを履いて2枚重ねで登りました。登山の度に悩まされていた、下山後の足の裏の疲労感は以前に比べて驚くほど軽くなりました。
スタートして30分もすると第一ベンチが現れます。ここには水場があるのですが登山口に近いため、うっかりして水を十分に用意していなかったか、下山途中で飲み干してしまった場合以外あまり用はないように思えます。
荷揚げ用ケーブルをくぐるとすぐに第二ベンチがあります。ここまででまだ全体の4分の1にも達していません。
行動食はドライフルーツと塩分チャージタブレット。
それと井村屋のスポーツようかん。今回初めて食べたのですが、あんこが苦手なのでチョコレート味なのは助かります。
6月のこの日はあまりパッとしない天気だったのですが、だんだんと雲が多くなってきました。雨が降り出す前に少しでも先に進みたいとペースを上げたくなりますが、久しぶりのテント泊の荷物量なので焦らずにマイペースを守ります。
いつの間にか第三ベンチを過ぎ、更に富士見ベンチから30分ほどで合戦小屋に到着しました。少し前に雨が降ってきたので合戦小屋の軒下を借りてレインウェアの上下を着用します。中房温泉から合戦小屋まで約3時間でほどコースタイムどおりでした。ここから燕山荘まではあと1時間ほどの距離です。
合戦小屋を出てしばらくすると何カ所かで雪が現れました。ですがコースの脇に溶け残っている状態だったのでチェーンスパイクの類は不要でした。
奥の方に燕山荘が見えてきました。まだあんなにあるというより、もう少しといった感じです。雨は弱いまま。
途中で鎖が出てきますが、なくても問題なさそうな感じで危険というわけではありません。もちろんどんな場所でも油断禁物です。もしここに雪に残っていたら鎖はありがたいですね。
燕山荘がだんだんと近づいてきました。ここまで来ればあと一息ですね。
事前にヤマレコなどで確認していたので知ってはいたのですが、テント場にだけなぜか雪がたっぷり残っています。寒いのは苦手なのでできれば雪の上には張りたくない。
ようやく燕山荘に到着しました。まず受付で予約した旨を伝え、宿帳に記入し料金2,000円を支払います。燕山荘のテント場もコロナ以降例に漏れず予約制です。トイレは通常テント泊用を使用するのですが、改築中なので受付の横のトイレを使うようにとのことでした。
ランチメニューの一覧です。チキンインドカレーが気になります。今回は食堂を使える時間帯とタイミングが合わなかったので利用しませんでした。
燕山荘のテント場の広さは40張ですが半分以上のスペースにはまだ雪が残っていました。ですがなんとか地面が露出しているスペースを確保。ちょっと斜めになっていますが、この際それは大きな問題ではありません。
前回テントを使ったのは2019年9月の双六小屋です。
双六小屋は裏銀座コースの途中にある人気の山小屋です。収容人数は約200名でテントは60張ほどのスペースがあります。小屋の前からは鷲羽岳を眺められ、雲ノ平の行き帰りに中継点として利用できる場所にあります。9月の連休にテント泊で登ってきました[…]
そのとき帰ってから洗いましたが、それから一度も取り出していませんでした。なので匂いがちょっと心配だったのですが、幸いなことにまったく問題ありませんでした。写真の上部分に写っている一段下がったスペースは雪がなく、当然の如く早い者勝ちで真っ先に埋まっていました。
小屋の前にあるこの有名な山男の像は畦地梅太郎作。
今日はもう食べて飲むだけです。賞味期限切れのビールは100円引きで売っていました。
テント場でははじめスマホの繋がりはまあまあでしたが、20時半を過ぎたあたりから繋がらなくなりました。
2日目 燕岳に登り合戦尾根を下る
燕山荘から燕岳まで片道30分弱なので、朝食の前にサブザックを担いでサクッと往復しました。一応ザックの中に水と面倒でもレインウェアを忍ばせます。尚、途中に危険個所はありません。
サブザックはシートゥサミットのウルトラシルデイパック。容量は20リットルで重さはわずか72グラム。
2日目は昨日ほどではないのですが、やはり雲がしっかり山々にかかっています。おかげで槍ヶ岳は見えずじまいでした。
なんとか富士山は見えました。
燕山荘から燕岳に向かう途中にイルカ岩やめがね岩があります。周辺にはイルカ岩と似たような形の奇岩がいくつかあります。
初めて訪れた時は燕山荘の建物のすぐそばにあるこちらの岩がイルカ岩だと勘違いしました。
イルカ岩を過ぎて燕岳に近づくとめがね岩があります。下にプレートがあり、岩が崩れやすいので登らないようにと注意書きがあります。ゴリラ岩はどこにあるのかわかりませんでした。
燕岳の山頂に着きました。
相変わらず山に雲が掛かっていました。
PeakFinderで山座同定。
この後朝食を食べ、テントを撤収後再び中房温泉へ向けて合戦尾根を下りました。12:30のバスには余裕があるので合戦小屋で小休止。
合戦小屋では名物のスイカを頂きました。
下山後は中房温泉の湯原の湯に立ち寄りました。登山口に入浴施設があるのはありがたいですよね。ビールなどのアルコールの他におでんやそば、うどん、カレーなどもあり、バスの出発時間まで不自由しません。
ここから少し下ったところに有明荘があり、そこでも立ち寄り入浴が可能です。