登山は早出早着が基本と言われています。これは初心者でもベテランでも同じです。どんなに経験を積んだとしても遅く出発してもよいというワケにはいきません。早めに出発して、遅くならないうちに目的地に到着するのには理由があります。
早めの出発はとても重要です。時間はあれよあれよと経ってしまいます。スタートが遅れてしまうとその後の登山計画全体に狂いが生じてしまうかもしれません。
早めに出発すべき理由はさまざまなところで語られていますが、実際に早くスタートするためには準備が必要です。特に初心者の方は歩き出す前の準備で時間を消費しがちです。この記事では登山口に着いてから、なるべく早く登山をスタートさせるためのポイントをご紹介します。
登山を早くスタートさせる理由
登山は午前中のなるべく早い時間に出発するのが基本です。山に行ったらゆっくりしたい気持ちになりますが、登山では時間を忘れることは許されません。
登山口に着いたらなるべく早く出発しましょう。その理由はいくつかあります。
時間に余裕を持たせるため
早い時間帯に登山をスタートするべき第一の理由は、十分な時間があれば危険を回避できる可能性が高いからです。普通の観光旅行であれば時間いっぱいスケジュールを詰め込んでも、さほど問題になることはありません。入場時間が過ぎてしまったり、公共交通機関が終わったりと、それはそれで困りますが命の心配をしなくてはいけないようなケースは少なくとも国内ではほぼありません。
ですが登山の場合、トラブルが命の危険に直結することも多く常に安全を意識する必要があります。早めに出発するのは十分な時間を確保するためであり、なるべく行動時間を午前中から昼過ぎまでに終わらせるためです。特に冬の場合は行動時間が短く、登山道の状況によっては想定よりコースタイムが掛かってしまうことも。
多くの山小屋では14~15時くらいの到着が目処になります。日没まではまだ数時間ありますが、時間に余裕があればトラブルが起きても対処が可能です。多少ルートを間違えても明るいうちに正しいルートに戻れますし、予想以上に体力を消耗したとしてもペースを落とすことができます。
なにより時間に余裕がないと心理的に焦りが生じて正しい判断が下せなくなる可能性が高まります。アクシデント時なら尚更です。
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雷は午後に発生しやすい
山では午後に天気が崩れやすく、さっきまで晴れていたのに急に薄暗くなってしまうことも珍しくありません。更に夏山では午後になると雷が起こりやすくなります。午前中に太陽によって温められた湿度の高い空気が上昇し、積乱雲が発達することで雷は発生します。
稜線上など隠れるところがない場所で雷に遭遇したらと考えるとゾッとしますが、実は山の中は至る所が落雷の危険ポイントです。岩場に落雷した場合、電流は岩より人体のほうが流れやすく通り道となります。もちろん高い木には雷が落ちやすくそばにいると側撃を喰らいます。樹林帯の中は安全そうに思えますが、もし自分がいる近くの木に落ちれば枝を伝って側撃を受ける危険があります。木からは2~4メートル以上離れると安全と言われていますが、どうしても木のそばを歩かなければいけない場合もありいつ落雷を受けてもおかしくありません。テントの中は安全かというとポールに落雷することもあります。
山で雷に遭遇したら山小屋などの建物、鉄塔や送電線の下に避難すると良いとされています。なので雷の危険の少ない午前中に行動するためにも登山開始は早めが望ましいのです。
午前中の方が気温が低い
一日のうちで最も気温が高いのは14時ごろです。午前中の気温が上がりきらないうちになるべく行動するようにすれば体力の消耗を抑えることができます。水分補給のために必要な水の量も当然違ってきます。持って行く水の量は荷物の重さに響きますし、荷物が重くなれば体力の消耗度やコースタイムにも影響がでてきます。
体力を消耗するほど判断力の低下を招き、事故のリスクは高まります。暑さと疲労で頭が回らないのは事故の一歩手前の状態ともいえます。
秋山は午後急激に気温が下がる
秋山登山の場合、日没時間が早くなり15時頃になると急激に気温が下がってきます。そうなると怖いのは低体温症です。街中では夏の暑い季節の続きでまだまだ気温が高い日が続きますが、秋の登山は夏山登山とはまったく違うと心得ましょう。秋の日は釣瓶落としという言葉があるように、午後の時間はサッカーにおけるアディショナルタイムくらいに思っても大げさではありません。
登山口に到着したらすぐに出発するために
マイカーだと夜中に登山口の駐車場に到着して、夜明けに登山をスタートさせることができるのでさほど時間に縛られることはありません。ですが電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合はスタート時間は時刻表に左右されますし、マイカーと比べて時間帯も遅くなります。
だからこそ登山口まで到着したら、そこでの準備や作業はできるだけ少なくして時間のロスを最小限に抑えたいものです。そのためには駅やタクシー乗り場、発車前にバスの中などでできることはなるべくやってしまう必要があります。
・サングラス、タオル、帽子、グローブは予めザックの取り出しやすいことろに入れておく
・ゲイターを装着しておく
・登山届けは登山口で記入するのではなくコンパスやヤマップなどを利用しネットで提出する
これらのことを登山口に着いてから行って時間を消費してしまうのは勿体ないです。たいした時間ではないかもしれませんが、あれもこれもと準備をしているとどんどん時間は経ってしまいます。登山開始直前にザックの中身を引っ掻き回しているようではいけません。
ただし特に年配者にいえることですが、なるべく早く出発したいからと準備運動やストレッチを省くのはおすすめできません。言うまでもないですが、ザックのフィッティングは丁寧におこない、靴紐はきちんと結びましょう。
まとめ
マイカーであれば時間の調整が利くのであまり神経質にならないかもしれませんが、公共交通機関はとにかく時間が決まっておりマイカーに比べて遅めの時間になります。はっきりいって登山口に到着する前に今回提案した準備を済ませるより、遅すぎないペースで歩いたり長すぎないコースを選んだほうがよっぽど時間を節約できます。ですが登山口で出発のための準備に時間をだらだらと費やすのは無駄なタイムロスでしかありません。
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