登山をやり始めた初心者の方が最初に悩む問題のひとつが服装です。今回は夏の登山シーズンの服装とその考え方についてなるべくシンプルに解説します。
ザックや登山靴をはじめ登山に必要な道具をいろいろ購入するとお金が掛かってしまい、服装は普段着から使いまわしできるものをと思ってしまうかもしれませんが残念ながらそうはいきません。中には登山で使えるアイテムもありますがごく一部です。一日中半袖で過ごす季節だから涼しい恰好で良いというわけではなく、普段の生活とはまったく別物と思ってください。
登山の際に着用する服はただ暖かい涼しいだけではなく、すべて機能性が求められます。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、その機能が登山者の命を守ってくれます。
登山ウェアの基本はレイヤリング
登山の服装で必ず出てくる言葉レイヤリング。いわゆる重ね着のことです。
基本は3レイヤーで肌に近いほうからベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターとなります。これらを着たり脱いだりすることで体温調節を行い汗冷えを回避しましょう。必ずしも常に3枚着ているということではなく、状況によってこまめに着たり脱いだりして体温をコントロールします。
登山において汗冷えはトラブルの致命的な要因のひとつです。汗をたっぷりかいた体に風が当たれば夏でも容易に低体温症に陥ります。
低体温症になると身体が思うように動かせなくなり、思考力や判断力が低下し怪我・事故に繋がります。最悪の場合命を失うことに。
実際のところ夏の登山の場合気温が高くTシャツ1枚で登る場合もよくあるのですが、ミドルレイヤーとアウターは必ず用意していくこと。これらを使った使わなくてもそれはあくまでも結果であり、持って行かないという選択肢はありません。
最初からすべて着こんでしまうと大量に汗をかいてしまいますので、標高が上がったり休憩で体温が下がり寒さを感じたら重ね着していくようにします。面倒くさがらずにこまめに着たり脱いだりすることがコツです。
ベースレイヤー
肌に直接触れるベースレイヤーは汗を吸い上げ、素早く乾くこと、すなわち吸汗性と速乾性が求められます。ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維や天然素材ではウールなどがあります。ウールは速乾性はありませんが、汗で濡れても冷えを感じにくいという特徴があります。
ベースレイヤーはTシャツタイプのものが多く夏山では半袖でも可です。着替えのために予備を持って行きましょう。
長袖のTシャツの上に半袖Tシャツを着ているスタイルも人気です。
速乾性があるといっても大量の汗をかくとベタベタした感触が不快ですし、太陽が出ていなかったり気温がある程度の高さまでないと汗冷えのリスクが高まります。そのような時はベースレイヤーの下にドライレイヤーを着用すると汗を吸い上げサラサラ感がキープできます。
ここで注意するのはドライレイヤーの上に着るベースレイヤーは密着するようジャストサイズを選ばないと、ドライレイヤーに含まれた汗をベースレイヤーが吸い上げてくれません。
ミドルレイヤー
ミドルレイヤーの主な役割は保温です。汗を逃がす役割も要求されるため通気性も備えています。一般的にミドルレイヤーというとフリース、インサレーション、ソフトシェルなど幅広いアイテムがありますが、夏山では秋~冬の寒い時期ほどの保温性は必要なく、薄手のフリースや山シャツなどがあげられます。
アウター
アスターは一番外側に着るウェアで防水・防風性に優れており雨や風から登山者を守る役割をします。雪山ではハードシェルがこれに該当しますが、無雪期の登山ではレインウェアが代表的なアウターとなります。素材は色々ありますが迷ったらゴアテックス製を選んでおけば間違いありません。
尚ミドルレイヤーの項にソフトシェルを上げましたが、気温が高い季節ではむしろアウターとして活用するシーンの方が多くなります。レインウェアに比べて通風性に優れたソフトシェルは行動中のアウターとして優秀なアイテムです。
レインウェアは高額なものが多いですが、ケチってビニール製の雨合羽で大丈夫なんて間違っても思わないでください。全然大丈夫じゃないどころか命にかかわります。
たとえ快晴と予報にあっても絶対にレインウェアは持って行くこと。
アウターには他にも手軽なウインドシェルなどもあります。
トレッキングパンツ
トレッキングパンツはストレッチ性があるため動きやすく、段差でもストレスを感じずに足を上げることができます。更に撥水加工が施されており速乾性もある優れモノ。岩や木の枝にぶつかっても多少のことでは破れない耐久性もあります。
トレッキングパンツにはハーフタイプもありますが、膝から下が保護されていないので怪我のリスクは上がっていまいます。その場合下にタイツを履くと怪我の防止になるのでおすすめ。またトレッキングパンツとタイツを履くことによる暑さの軽減にもなります。
女性はスカートとタイツを併用するスタイルもあります。
服装選びのときに心掛けるポイント
気温が30℃を超えるような日々を過ごしていると、服装を選ぶ基準を間違えてしまう場合も。低地と山では季節の感覚は別物と考えないと準備不足になります。
またデザインは登山ウェアを購入する際の大きな要素になりますが、それ以上に機能性を重要視しましょう。登る山や季節に合った機能を備えていないと登山の際に無意味になるどころか命取りの原因になる可能性もあります。
・長袖のウエアも用意する
・晴れていてもレインウェアは必ず持っていく
コットンはダメ!
快適な肌ざわりのコットンですが、登山においては使えない素材の筆頭です。木綿は水分を含むと乾燥しにくく、風に当たると気化熱により体温を低下させます。その先には登山では忌避すべき状態の低体温症が待っています。
替えのウェアを何枚も用意すればと思う人もいるかもしれませんが、登山は重い荷物を背負い坂道を登り常に汗をかくのが前提です。何枚スペアを持とうがまったく意味を成しません。
上半身だけでなくジーンズやチノパンも勿論NG。
登山は体温低下を起こさないようにしながら行動することが重要です。そのため速乾性に優れた素材のウェアを着用していても汗をタオルで抜き取り、保温着のこまめな着脱が求められます。
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長袖のウェアを用意
半袖のシャツ1枚で登ることも多い夏山ですが、長袖のウェアは必ず用意しましょう。
普段の生活では長袖をまったく着ない時期でも登山においては出番があります。平地ではうだるような暑さの日でも山では寒さを感じることは普通にあります。標高が100m上がると気温は0.6℃下がると言われています。
また行動中に上昇した体温も休憩すると急激に下がります。その時に素早く着られるミドルレイヤーやアウターを用意しましょう。半袖よりも長袖の方が暖かさを感じやすいのは説明不要ですね。
晴れていてもレインウェアは必ず持っていく
上でも書きましたがもう一度。平地と山では天気が違うことは珍しくありません。たとえ天気予報で100パーセント快晴となっていても絶対にレインウェアは持っていきましょう。荷物を減らしたいからと持って行かないのは許されません。
登山においてどの荷物を持って行かないかは、その人の登山スタイルや優先順位、信条などによりますし人それぞれです。ですがレインウェアは必ず持っていくマストアイテムの一つです。
登山に使える普段着を活用しよう
登山を始めるにあたって道具をひと通り買い揃えるのは経済的に大きな負担が掛かります。そこで普段着ている服で山で使えるものがあれば活用してみましょう。必ず素材を確認してください。
スポーツTシャツは基本的に速乾性があるので夏山に使えます。登山メーカーのTシャツよりも安価です。
ジャージもジャケットはミドルレイヤーとして、パンツはトレッキングパンツの代わりになります。ただし見た目に抵抗感があるかも。学校の引率の先生がジャージで登っているのを見かけたことがあります。
普段着で人気のフリースですが防寒着として使えます。厚手だと使い勝手が悪くなるので、薄手のタイプが適しています。
ただしどれも登山の条件を想定して作られたものではないので、機能性において劣る場合があります。
アウトドアブランド以外で登山ウェア購入
ユニクロやワークマンではアウトドア用のウェアに力を入れ始めたので、登山ブランドよりも安く購入できます。登山専門ブランドは強気な値段設定なので安く代用できるものであれば活用するのもありです。
特にワークマンはもともと屋外での作業を前提とした商品を開発しています。そのためアウトドアとは親和性が高く、デザイン性を改良してコスパの良さはそのままという強みを生かし支持を集めました。
かつてユニクロは登山ではダメという意見も散見されましたが、モノと使いようによっては十分通用します。ポリエステル製のスポーツTシャツはそのままベースレイヤーとして使えますよ。
ただしユニクロは公式にアウトドアでの活用をアピールしていますが、こと特に真夏以外のシーズンの登山に限っては鵜呑みにせずよく吟味する必要があります。
たとえばユニクロは登山に使えるとの認識から寒さを感じるシーズンにヒートテックを着てしまうようなケースです。ヒートテックに関してはドライレイヤーを併用すれば使える手もあるのですが、このような活用の仕方はある程度経験を積んで登山の理解が深まってからのほうが望ましいと思います。
初心者でどうしてもユニクロやワークマンで登山ウェアを購入したいのなら自分だけで判断せずに、経験者に聞いてみるかネットの個人サイトなどでのレビューをいくつか確認することをおすすめします。
登山ウェアをレンタルする
初めて登山をするけど続けるか迷っている人にはレンタルが便利です。登山のためのアイテムを全部揃えると10万円くらいは簡単に掛かってしまうので、登山をやると決めているわけではないとどうしても躊躇しますよね。
やまどうぐレンタル屋はウェアだけではなく、ザックや靴をはじめ幅広い登山用具をレンタルしています。小さな子ども用から大きいサイズまで対応可能です。