冬期はもちろん早春や晩秋といった気温の低い時期だけでなく、場合によっては真夏でも必要なグローブ。
その主な目的は防寒ですが、岩場を登る際のグリップ力の確保や擦り傷や切り傷の防止などにもグローブは重要な枠割を果します。
またその種類は用途に応じて、オーバーグローブ、フィンガーレスグローブ、インナーグローブ、レイングローブ、防風グローブなど様々なタイプがあります。
険しい岩場や鎖場が続くルートでもない限り真夏の登山では持っていかないこともあるグローブですが、それ以外の季節では必須アイテムといってもいいほど実は重要な装備でもあります。
手、特に指先の保温は重要で、グローブを忘れたり行動中に紛失したりすると場合によっては即、緊急事態になりかねません。
そんな大事なグローブを登山中に紛失したり、そもそもザックに忍ばせるのを忘れたりするのはやってはいけない失敗ですが、それでもミスをするのが人間です。
やっちまった時のリカバリーを知っておくと最悪の事態を免れる可能性が高まります。凍傷になったらシャレになりません。
グローブを落とすな忘れるな
雪山の場合、グローブを失くしたり忘れてしまうと即撤退なんてことになります。例え気温が高く晴れた日でも急に天候が変わる可能性はゼロなんてことは想定してはいけません。
出発前のパッキングの段階で防寒着に何を持って行けば悩んだ末にグローブのことをすっかり忘れたなんてことにならないように。
帽子やバラクラバなどとは比べ物にならないくらい致命傷クラスのミスです。
凍傷にならなくても手が冷えてしまうと当たり前にできたことが、思うようにできなくなります。
ガマンできそうなくらいの冷えだと思って横着してグローブを装着しないでいると、いつの間にか感覚がなくなり細かい作業はもちろん指に力が入らず簡単なジッパーの上げ下げすらもままなりません。
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ザックから必要な装備を取り出すなど普段ならなんでもない動作も一苦労ですし、ウェアの着脱や装備の装着なども迅速にできなくなるどころか不可能になることもあるので気が付いたらかなり危険な状態になっていることに。
雪の無い季節だとグローブくらいなくても大丈夫と思うかもしれませんが、天候や登山道のコンディションによってはそうも言ってられないこともままあります。
更には登山中に落としたり、風で飛ばされたりして紛失してしまうリスクも想定内に入れておきましょう。
スマホやカメラを操作したりザックから荷物を取り出したりと、グローブをつけたままでいると作業できないことも色々あるので、一時的に外すこともあるかと思いますがその際には細心の注意が必要です。
飛ばされないように脇に挟んでいる人をよく見かけますがかなりリスキーな行為です。
ましてや少しの間だからと地面に置くなんて言語道断です!
グローブに限った話ではありませんが、登山中に装備を落とした場合無事回収できたらラッキーです。たった数メートル飛ばされただけで回収不可能なケースなんて珍しくありません。
特に冬山の場合、極寒の中で強風にグローブを飛ばされてしまうとその時点でゲームオーバーです。
オーバーグローブには紛失防止のリーシュ付きの他タイプもありますが、もしない場合は別途購入しておくことをお勧めします。
大袈裟に聞こえるかもしれませんが文字通り命綱です。
予備のグローブを必ず用意しておく
真夏にちょっとした岩場のために持って行くくらいなら話は別ですが、基本的にグローブの予備は用意しておきましょう。
ザックのスペースを占領しますが必要装備です。
特に冬山の場合はオーバーグローブの予備は必需品です。
インナーグローブも予備は必要ですが、無ければなんとかごまかしが効く可能性もあります。
ですがオーバーグローブの代用品は基本的にありません。たとえ目指した頂上があと少しとう距離にあっても、凍傷にならないうちに一刻も早く下山するハメになります。選択肢はありません。
インナーグローブと比べて高価なオーバーグローブをもう一組購入するのは躊躇してしますよね。
そこでおすすめなのがテムレスです。数千円という購入しやすい値段であり、ベテラン登山者に愛好家も多いことから使い勝手や性能に一定の信頼が置けます。
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インナーグローブの予備ももちろん用意する必要があります。
汗ですぐにグローブの内側が濡れてしまう人はファイントラックのドライレイヤーインナーグローブがあると便利です。
ベースレイヤーの下に着るドライレイヤーのグローブ版で、汗を吸い取ってすぐ上のグローブに吸い上げるたけ手をドライに保ってくれます。
更にはスマホの画面も反応するので着けっぱなしでOK。
撥水性もありこれ一枚だけを付けている状態で雪が多少付着しても水分の侵入を防いでくれる優れモノです。
冬でなくても早春や晩秋の気温が上がらない季節も念のため予備をザックに忍ばせておくと安心です。
緊急時にグローブの代わりになるもの
もし薄手や中厚手のグローブを忘れたり紛失してしまって予備もないとなったら、グローブの代わりになる装備でその場を凌ぐことになります。
その場凌ぎのグローブの代用品として色々ありますが、見た目は二の次になります。
グローブを付けていると細かい作業が難しくなりますが、代用品の場合ひたすら手の保温を優先することになり、どのような作業もほぼできなくなります。
とにかく手を冷えから守れるアイテムなら利用できるものは何でも利用しましょう。
ですが厳冬期の場合、どんな代用品も重ね着したグローブに保温性は及びません。ないよりはマシくらいの話になります。
タオル
だいたい真っ先に思い浮かぶのがタオルではないでしょうか。
ただし大量の汗を吸った状態だと逆に冷えてしまいます。
乾いているなら他の代用品に比べて使い勝手が良いのがメリットです。
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長袖シャツやシェルの袖
別にグローブを失くした場合でなくても、少し寒いけどグローブを出すのがめんどくさいときにやっている人は普通にいますよね。
手首までの長さの袖に指先まで収めるので腕や肩は縮こまった状態になり、バランスを崩したときに咄嗟の動作がワンテンポ遅れがちになりがちです。
帽子
ニット帽だとある程度の暖かさが確保できますが防風性があるわけではありません。
冬以外ならキャップやハットになりますが保温性はあまり期待できず、とりあえず指を外気に晒さないための処置になります。
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手拭いやバンダナ
頭に掻く汗を吸い取ってくれる手拭いやバンダナは軽くてかさばらず、汗っかきの登山者にとってはとても重宝するアイテムです。
手にぐるぐる巻けば薄手のグローブの代わりになりますが、頭に巻いたやつを使おうとすれば当然汗を吸っているので風を受けると冷えてしまいます。
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バラクラバやネックゲイター
バラクラバもネックゲイター寒い季節に重宝します。
そこそこの保温性があるのでグローブを失くしたときには頼りになります。
バラクラバが必要なくらい寒い環境だと顔面の保温はどうするんだという話にはなってしまいますが。
スパッツ
いわゆるゲイターですが硬い雪山用ではなく、無雪期用の薄いタイプなら手に巻くことも可能です。
防水性もあるのである程度の雨にもそこそこ対応可能です。
少なくともタオルや手拭いなどよりは雨による濡れを防いでくれます。
ソックス
予備の靴下は手袋代わりに最適とはいいませんが、使い勝手は悪くはありません。
厚手のタイプなら保温性もある程度期待できます。
当然使用前の状態が望ましいのですが、どうしようもない場合は止むを得ません。クサいけどウール製なら肌ざわりは上々です。
エマージェンシーシート
そのままでは大きいのでカットして手に巻きます。
保温性もあり防風性もバッチリです。
ただしその後万が一ビバークするハメになったら後悔することに。
ビニール袋
コンビニ袋やジップロックなどのジッパー付きビニール袋も無雪期なら利用可能です。
見た目を気にしていられないほどの状況から恥ずかしがっている場合ではありません。
カイロ
グローブの代わりというより手を冷やさないアイテムです。
その他にもスマホやカメラのバッテリーを温めたり(※急激な温度変化はバッテリーの劣化を早めるため推奨されません)、食料によっては少し温めることも可能です。
一口にカイロといってもタイプがあり代表的なものとして使い捨てカイロ、ハクキンカイロ、充電式カイロなどがありそれぞれメリット、デメリットがあります。
使い捨てカイロ
一般的にカイロといえば使い捨てカイロを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。
安く且つ容易に入手できて便利な使い捨てカイロですが、使い終わったらゴミになります。
ですが間違っても山の中に捨ててはいけません。
手軽に使える反面、気温が低すぎる環境では発熱しないこともあるので、厳冬期に山に持って行っても役に立たない可能性もあります。
ですが積雪期ほど気温の低くない春秋なら有難みを確実に感じられます。
尚、グローブの代わりという話ではありませんが、貼るタイプは発汗を促すこともあり汗冷えを引き起こす可能性があるのでおすすめできません。
ハクキンカイロ
使い捨てカイロより発熱量が高く、より気温の低い環境でも使用可能なのがハクキンカイロです。
ベンジンを燃料として白金(プラチナ)の祖触媒作用により酸化発熱する仕組みです。
大正時代に開発された暖房器具ですが、使い捨てカイロが役に立たないような気温の低い環境でもその威力を発揮できるほど耐寒性に優れています。
長く使えて愛着も湧き、レトロ好きな人にはなかなか魅力的な装備ですね。
ただし厳冬期の北アルプスの高所など、極寒で十分な酸素が確保できないほどの高所では発熱が弱かったり途中で消えてしまうことあります。
ベンジンを扱うため燃料補給や着火の際には注意が必要です。
充電式カイロ
充電式カイロは安全で簡単に使用でき、多くの商品では温度調整機能も備えています。さらにモバイルバッテリーとして使えるタイプもあります。
リチウムイオン電池を使用しているのでスマホと同じく寒さに弱い弱点があり、なるべく外気に晒さないようにするのが発熱をスムーズにするコツです。
使い捨てカイロやハクキンカイロと比べてもリチウムイオン電池の性質上、充電式カイロは最も寒さに弱いタイプとなります。
また使用時間も他のタイプと比べて短めで、重量もあるので荷物を軽くしたい時は持って行くのが躊躇われるアイテムでもあります。
まとめ
登山を始めたばかりの頃は三種の神器には含まれていませんし、たかがグローブと思うかもしれません。
ですが指先や手が寒さで凍えてしまうと想像以上に様々な作業ができなくなりますし、登山においてその状況は当然キケンな状態といえます。
場合によっては温めてもすぐに回復しないこともあります。
ウェアの着脱はままなりませんし、当然車の運転はNGです。
もし登山中に必要な状況にも拘わらずグローブを忘れたり紛失した際は、なりふり構わず利用できるものは何でも利用して手を保温しましょう。