ティートンブロス(Teton Bros.)はアメリカにあるグランドティートン国立公園が名前の由来ですが日本のアウトドアブランドです。創業は2007年と比較的新しいのですが、登山ガイドやスキーヤーなどエキスパートのフィードバックを重視し、実地テストを繰り返し商品開発を行うことでアウトドア業界から高い評価を得ています。ティートンブロスの代名詞ともいえるツルギジャケットが2013年にPolartec APEX Awardを受賞したことで知名度が広がりました。
そんなツルギジャケットとともにティートンブロスを代表するモデルであるTBジャケットを購入しましたのでレビューしたいと思います。
新素材タズマ
ティートンブロスのTBジャケットは2008年に登場以来、数年おきにマイナーチェンジを繰り返してきましたが、最新モデルではメインで使用している素材がポーラテックネオシェルから東レのタズマに変更となり大きな進化を遂げました。
TBジャケットの特徴はなんといっても優れた透湿機能です。豪雨や吹雪いた環境でハードな運動をしても汗で蒸れないウェア。それはティートンブロスが追い続けてきた理想ですが、東レと共同開発した新素材タズマがそんな理想を更に高いレベルに押し上げたのです。国内で開発、製造されているということで安心感がありますね。
従来のファブリックと比べ透湿性は同等のレベルを維持しつつ耐水性が向上しました。ゴアテックスでは耐水圧は45,000mmですが、それに比べてネオシェルは雨を防ぐのには十分と言われる10,000mmでした。それが今回タズマでは従来より5,000mm以上の耐水圧アップに成功。それでもゴアに比べて耐水圧の数値が低いと思われるかもしれませんが、この数値はフィールドテストを重視しているティートンブロスが出した結論でもあります。それに高すぎる防水性は透湿性の妨げになる可能性も。尚、防風性については外気を99.9%遮断するそうです。
撥水性についてはゴアテックス同様、表面に耐久性のある撥水加工(DWR)を施し生地に付着した水滴の浸透を防ぎます。さらには撥水性や防水性の低下を招く皮脂などの脂分を弾く撥油性も備えているとのこと。通気性は撥水性が担保されていてこそ、その性能を十分に発揮されます。
今までのネオシェルはストレッチ性に優れていましたが、タズマでもその特徴を受け継いでいます。ティートンブロスはバックカントリースキー・スノーボードを念頭に置いた製品開発を行っているのでストレッチ性は欠かせません。
これまでもティートンブロスは機能性にこだわってきました。従来のモデルでも機能性において高い評価を得ていましたが、それに飽き足らず更なる高みを目指す姿勢からはティートンブロスの理想への探究心が窺えます。
TBジャケットの紹介
TBジャケットのサイズはS、M、L、XLがあり、身長173cmの私はMサイズでちょうどフィットしました。重量はMサイズだと530g。ハードシェルで400g台は珍しくないので軽い方とは言え無さそうです。ですが重いとは感じません。
画像引用:TetonBros.
カラーはアボカドグリーン、ネイビー、ワインレッド、ガンメタル、オリーブ、ブロンズ、オレンジの7色が展開されています。その中からアボカドグリーン、ネイビー、ワインレッド、ガンメタル、オリーブで悩みましたが選んだのはワインレッド。もし自分に経済力があれば色違いで揃えたい。
触ってみると着用する前から柔らかさ、しなやかさが伝わってきました。ゴアテックス製と比べゴワゴワ感はほとんどなくハードシェルとは思えません。動きやすそうです。
フロントのジッパーはスライダーが2つ付いており、上下どちらからでも開け閉め可能。個人的には下から開ける使い方はあまりしません。
正面左右のポケット。開口部のジッパーの長さは十分です。ここが狭いと手袋をしながらのモノを出し入れがスムーズにできません。サングラスは勿論ゴーグルも入ります。
表のフロントポケットの裏の位置にメッシュの内ポケットがあります。表のポケットより小さめ。
フロントポケットの外側に斜めにベンチレーションがあります。ここのジッパーもフロント部分と同じく上下どちらからでも開閉可能になっています。個人的にはベンチレーションは閉めるより開けるほうを素早く行いたいので、普段はスライダーを上に上げた状態にしています。よくある脇の下のベンチレーションは開け閉めがしにくいので好みではありません。因みにオーバーグローブを一時外した際は内側のポケットは勿論入りませんし、外側のポケットもギリギリサイズなのでベンチレーションから突っ込むことになります。
左上腕部には小さめのポケット。ベンチレーターではない。総じてどのジッパーも軽やかに開け閉めはできず、やや力を入れる必要があります。
袖口は広いのですが手首をベルクロで締めて雪の侵入を防ぎます。手首のベルトはグローブを装着したままでも操作しやす形になっています。
首回りはボタンをつまみながらドローコードで調整します。
頭部の調整は耳のあたりから出ているドローコードで調節します。写真ではわかりにくいのですが、ドローコードはアイレット部分で固定できる形状になっています。
腰回りも首の部分と同様に左右の腰部分についているボタンをつまみながらドローコードで調整します。
TBジャケットを使ってみた感想
実際に雪山で着用したところ、まず感じたのは十分なストレッチ性があり体が動かしやすいです。もちろんソフトシェルには敵いませんが、とにかく動きやすい。ゴワゴワ感からくるストレスはほぼ無くうれしくなります。
初めて使用したのは12月の根子岳。当日は登山口に7時の時点で12~13℃。太陽も出ており快晴でした。ミッドレイヤーはアークテリクスのアトムLTフーディ。
普段ならこのコンディションだとミッドレイヤーかアウターのどちらかを脱いで行動するのですが、敢えてどちらも着たままでスタートしました。
いままで高価格帯の代名詞であるアークテリクスという名前だけで敬遠していましたが、ここ数年登山界で注目されているアクティブインサレーションを探しているうちにアトムLTに行き着きました。これまでは冬山ではフリースの上にアウターを着ていたので[…]
いままでならこの条件下だと透湿機能が追い付かず体温がウェアの中に籠って速攻でジッパーを開けていました。ですがTBジャケットの場合その必要はありませんでした。勿論ペースを上げたり、荷物がもっと重かったりしたら体温も上昇し発汗量も更に多くなっていたとは思います。ちなみに雨の中で使用したことはないので撥水性については未確認です。
ベースレイヤーの下にファイントラックのドライレイヤーを着用していたので汗で濡れた感覚はあまりなく、その吸い上げた汗もシェルの中で籠るようなことはありませんでした。とはいえ運動強度を上げた場合、さすがにベンチレーションでの換気は必要です。タズマの特徴である透湿機能をより実感するには直接肌に触れるドライレイヤーを活用すると良いと思います。
TBジャケットのイマイチな点
正直いってTBジャケットについて致命的な弱点はいまのところありません。はっきりいって厳冬期に3000メートル級の山で猛吹雪な中でも耐えられるかどうかはわかりません。あえて言えばゴアテックスに比べて低い対水圧ですが、あくまでも耐水性を最優先し、耐水圧が高ければ高いほど良いといった志向の登山者であれば不安があるかもしれませんね。
まとめ
TBジャケットに限らずティートンブロスのアウターシェルはコンセプトとして圧倒的な防水性や防風性を目指しているわけではありません。それよりも行動中の発汗による蒸れ、汗冷えを回避するために防水性を担保しつつ通気性を追求するスタイルです。
ハードシェルはどれも高価ですし、簡単に買い換えられるものではありません。自身の体質や登山スタイルを考慮した上で自分にマッチしたものを選びましょう。今回ご紹介したTBジャケットならば汗かきな人や、とりあえずゴアテックス素材のシェルを使用しているけどウェア内の蒸れに悩まされている人の悩みを解決してくれます。
ハードシェルの透湿性、通気性においてティートンブロスは最上級の機能を持つ製品を送り出してくれました。