まだソロでの登山に自信のない初心者が経験者の先輩や友達から登山に誘われたら、正直めちゃくちゃ嬉しいですよね。
地図の読み方もコースタイムの感覚もまだよくわからない初心者にとって、経験者について行くのは心強いものです。
ですがザックの中身も相手に頼りきり、道もついていくだけ、写真だけ撮ってればいい……こんな勘違いしていませんか。
もしあなたがそんな風に考えていると相手に伝わってしまったら、その人は誘ったことを激しく後悔することになります。
もちろん初めから知識も装備も完璧な人はいません。
だからこそ初心者のうちは経験のある同行者がいると安心です。
でもここで大切な心掛けがあります。
それでも経験者に連れて行ってもらうとしてもおんぶにだっこ状態にならないよう、ルートや現在地くらいは自分でも把握しておいた方がいい。
「経験者がいるから大丈夫」と思って登山に出かけ、ふと気づけば自分がどこを歩いているのか全くわからない。
そんな状態は、同行者にとってもあなた自身にとっても危険です。
「全部お任せで大丈夫でしょ」と考えるのは、ちょっと危ないんです。
「連れていってもらう」ではなく「一緒に行く」というマインドで。
お客さん気分はNGですし、同行者に伝わりあなたへの不信感が募り始めます。
「連れて行ってもらう」こと自体は悪くない
初心者が経験者に連れて行ってもらうこと自体は、全然悪いことではありません。
むしろ、初めての登山なら経験者と一緒に行くのは良い選択だと思います。
登山には、普段の街歩きとは違う部分があります。
道が分かりにくかったり、急に天候が変わったり、思った以上に体力を使ったり。
地図を見ても、最初は「この線を歩けばいいんだな」くらいしか分からないかもしれません。
だからこそ、経験者と一緒に歩きながら、
「ここは分岐だから間違えやすいよ」
「この先から急登になるよ」
「この標識を見たら右ね」
なんて教えてもらうのは、初心者にとってかなり勉強になります。
最初から何でも自分で判断できるわけではありません。
経験者に頼ることは、決して恥ずかしいことではないと思います。
問題なのは、「経験者がいるから、自分は何も知らなくていい」となってしまうことです。
ここは分けて考えた方がいいでしょう。
「前の人についていけばいい」は意外と危ない
初心者の登山でありがちなのが、とりあえず前の人についていけばいいという状態です。
経験者の後ろをついて、景色を楽しみながら歩いています。
地図はリーダー任せ、分岐点も気にせずスルー、休憩ポイントも「そろそろ休もうか」と言われるまで気にしない。
これ自体はまあ普通そうなりますよね。
普通に考えればこれで問題なさそうです。
ところが山ではちょっとしたことで列が離れることがあります。

写真を撮っている間に距離が開いた。
トイレに行った。
水を飲むために少し立ち止まった。
靴ひもを結び直している間に先に行かれた。
気がついたら、前にいた人が見えなくなっていた。
こうなると、急に不安になります。
しかも自分がどこにいるのか分からなければ、とりあえず来た道を戻ればいいのかなと判断する材料がありません。
経験者がすぐ合流できればいいですが、もし何らかの事情で離れてしまったらどうでしょう。
そのとき、「自分が今どこにいるのか分からない」というのはかなり困る状況です。

自分が今どのあたりにいるのか、次の分岐や山小屋、下山口がどこにあるのか、まったくイメージできていないとパニックになりやすいんです。
頼りにしていた相手がいなくなった瞬間、情報がゼロの状態に放り出されるわけですからこれは結構怖いことです。
頼れる相手がいることと、自分が状況を把握していることは本来まったく別の話なんです。
だから、初心者のうちから自分の現在地を把握するという習慣をつけておいた方がいいんです。
最低限「今日はここを歩く」くらいは知っておく
では、何を知っておけばいいのか。
最初から地形図を完璧に読める必要はありません。
登山計画を自分一人で作れるようになる必要もありません。
まずは、「今日はどこから登って、どこを通って、どこまで行くのか」くらいを確認しておきましょう。

例えば、「○○登山口から入って、○○山頂まで行く」だけでも違います。
できれば「別方面への分岐がある」、「山頂の手前に急な登りがある」、「途中に山小屋がある」といったことも見ておきます。
これだけでもただ後ろを歩いている状態から、自分もこの山を歩いているという感覚に変わってきます。
頻繁に地図アプリで現在地を確認するクセもつけておくと、自分がどこにいるのかを常に頭の中で把握できます。
ずっと地図を見ながら歩く必要はありません。
むしろ、歩きながらスマホばかり見ているのは危ない。
休憩したときや分岐に着いたときなどに、「今どこ?」と確認するくらいで十分です。
例えば休憩中に地図を開いて、
「登山口からここまで来たんだな」
「次はこの尾根を歩くんだな」
「あと少しで○○分岐だな」
と確認しておく。
これを繰り返していると、だんだん山の地図と実際の景色が頭の中でつながってきます。
「この道を曲がったら地図ではここ」
「このピークを越えたら次はあの場所」
という感覚が少しずつ分かるようになります。
これは登山経験を積むうえで、かなり大きいと思います。
「現在地を確認する癖」をつける
ルートを事前に確認したら、次は実際に山を歩いているときです。
ここで初心者のうちからやっておきたいのが、「今、自分は地図のどこにいるのか」を時々確認することです。
といっても、歩きながらずっとスマホの地図を見ている必要はありません。
むしろ、それでは前方の登山道を見ることがおろそかになってしまいます。
ポイントは、何かのタイミングで「今ココ」を確認すること。
例えば休憩するとき。
水を飲んだり、行動食を食べたりしながら地図を開いてみます。
「登山口から歩き始めて、今はこの辺か」
「さっきの分岐を通過したから、次はこの道だな」
という程度で構いません。

そうやっていると頭の中に少しずつ自分の歩いているルートが入ってきます。
これは地図読みの練習にもなります。
最初は地図を見ても、線と数字ばかりでよく分からないかもしれません。
それでも、実際に歩いている場所と地図を照らし合わせていると、自分の歩いているルートを俯瞰で把握できるようになります。
これだけでも、ただ前を歩く経験者についていくのとは大きな違いがあります。
分岐は特に意識しておきたい
初心者のうちは、すべての道を覚える必要はありません。
ただし、分岐は意識しておいた方がいいです。
登山道では、まっすぐ行く道と別の山へ向かう道が分かれることがあります。
経験者と一緒なら、「ここを右ね」、「次は○○方面」と教えてくれるでしょう。
そこで「はい」と言って終わりにするのではなく、ちょっと地図を見てみる。

「今いるのが○○分岐なのか」と確認しておくんです。
例えば地図上で、登山口 → ○○分岐 → △△峠 → 山頂というルートだったとします。
実際に歩いていて○○分岐に到着したら、ここまで来たんだなと確認する。
更に帰り道も注意が必要です。
疲れてくると自分が思っている以上に判断力も落ちてきますし、さらにはその自覚がないことも多々あります。
「あれ?こんな道だったっけ?」となることも珍しくありません。
そんなときに、「自分は○○分岐を通って、ここまで来た」という情報が頭に残っていれば、状況を判断しやすくなります。
分岐って自分が進んでいるルートが正しいかどうかの判断基準としてわかりやすいメルクマールとなるんです。
「連れて行ってもらう」から「一緒に歩く」へ
経験者も初心者がただくっついて歩くだけという態度でいるよりも、自主的に関わる態度や行動をしてくれた方が好ましく思うものです。
もちろん経験者に頼っていいですし、いろんなアドバイスには耳を傾けるべきです。
そのうえで自分でもできる努力はしていますという姿勢が伝わると、相手も好感度が上がりこの人のためにという気持ちになるものです。
逆に自主的な姿勢が見られず、すべておまかせの上に「思っていたのと違う!」なんて不満を漏らしたら、その人は二度と一緒に行ってくれないかもしれません、
初心者だから知らない、わからないのは当たり前ですが、思い通りにいかなかったり、何かあったら人のせいと考えるのは登山以前の問題で人としてNGです。
それにどんなベテランであっても人間です。
経験者だって一から十まで初心者の面倒を見られるとは限りません。
経験者だからといって、体調を崩さないわけではありません。
転ぶことだってあるし、道を間違えることもあります。
まして、何時間も歩きながら、ずっと初心者の状態を確認してくれるとは限りません。
だから、「経験者が全部見てくれるから大丈夫」という前提でいるより、「経験者と一緒だけど、自分でもある程度は状況を把握しておこう」と考えるべきです。
これは経験者に対する遠慮というより、むしろ一緒に登る相手への配慮でもあります。
もちろん初心者を連れて行く側も、ある程度の責任を持って行動する必要はあります。
とはいえ経験者に連れて行ってもらうことと、登山を丸ごと任せてしまうことは別です。



